モカモアのいろいろ
冬限定の企画として行っている『犬と一緒席』
今年はコロナ対策で店内の席を減らしたため
従来のように犬と一緒席を設けることができなくなりました。
よって、以下の方のみのサービスとさせて頂きます。
○モカモアのリピーターの方で、おとなしくできることがわかっている犬さん。
指定席、ヒト3名犬3名まで、予約不可。
席が埋まっていて利用できないこともあります。
ご了承くださいませ。
モカモアでは、皆さまから本のご寄付を集める「森の図書館」計画を、開店と同時に始めました。
賛同してくださった多くの方々から、心のこもった温かい本のご寄付を多数いただき、多くの本が集まりました。静かな森の隠れ家には、たくさんの本があって、まるで「森の図書館」のようになりました。
現在も寄付は継続しています。みんなに読んでもらいたい本。この空間に合うと思う本などありましたら、ぜひお持ちくださいね。
本当に多くの方々がこの企画に賛同してくださいました。小説、詩集、図鑑、絵本、雑誌、…いろんなジャンルの本が集まってきました。それらに込められた温かい気持ちもたくさん受け取りました。そして、心が揺さぶられる本との出会いもありました。これからも素晴らしい出会いを心待ちにしています。
モカモア一同
かおしろさんは、現在3代目。
毎度「顔が白い」金魚をスカウトしています。
『ある金魚を巡る話』 きのこさん著
モカモアコーヒーの「かおしろさん」のことならおもしろい。
かおしろさんは、お店の受付をしている顔の白い金魚です。
琉金(りゅうきん)というどこにでもいる種で、2008年の夏、某ホームセンターMサシで出会う。
今は直径30センチ程の金魚鉢にいて、空気のブクブクもないんだけど元気です。
すぐそばの沢の水を汲んできて2週間に1度くらい換えてあげます。
真冬はほとんど動かず、段ボールと毛布を掛けてあげて寒さをしのぎ無事冬を越しました。
最近、金魚は満腹中枢がないと聞きました。そうとは知らず餌をやりすぎたのか、ぽっこりお腹で明らかに太っている。
それでもかおしろさんはお客様を笑顔にする力を持っているからすごい。
「金魚が太ってる!ワハハ」と大笑いされ、
「キャー!かわいい」とデジカメでパシャリ。
「いた!ほんとにいた。かおしろさん」
「ママ、金魚のおもちゃがいるよ」
「金魚が生きてるぅ~」
「うちには金魚じゃなくて鉄魚がいる」とか…。
ムスッとしたおじさんまでもがかおしろさんに向かって
「金魚バイバーイ」って手を振って帰るとか。
これはもう「かおしろマジック」というしかないですね。
あの…みなさん、ただの金魚ですよ~。
かつて、うっちゃん1号・2号・3号という
ウコッケイがいて、守衛の仕事をしておりました。
現在は、いません。
『うっちゃん物語』 きのこさん著
(その1)
今日は「うっちゃん」についてお話しましょう。
うっちゃんはウコッケイ(烏骨鶏)です。1号・2号・3号の3羽おります。1号と3号はメスで2号はオス。
普段、モカモアコーヒーの入口にいて「守衛さん」の任務を果たしている。
うっちゃん達を見ていると、鳥にも性格があっておもしろい。
物語はモカモアコーヒーが開店する1カ月程前から始まる。
知人宅から貰えることになっていたウコッケイが来るのを心待ちにしていた。
小屋も念入りにこしらえた。しかし、しばらく待ちぼうけだった。まだ小さくてオスメスの区別がつかないらしい。
それから半年以上たった3月上旬のある朝、
突然何の前触れもなく彼らはやってきた。段ボールから真っ白な2羽のツガイが飛び出した。
ウコッケイというものをこの時初めて見て、ニワトリの一種なんだなと知った。鳴き声もまさしくニワトリだった。
しかし2羽とは困った。
メス1羽のつもりで名前は「うっちゃん」1つしかない……ふむ、「うっちゃん1号・2号」にしよう。
しかも男性が1号ではおもしろくない。1号がメスで2号がオスだ。
彼らは、妙な所へ連れてこられたとご不満だった。
1号はびくびく怯えてごはんも喉を通らない。2号は好奇心旺盛ですぐに慣れた。
1号も徐々に慣れて3日目にはごはんを食べた。
2号は1号が元気になって喜んでいるようだ。
自分より先に1号にごはんを食べるように勧める。なんと紳士である。
二人はとても相性がいいらしい。小さな丸太の木を置いてあげると、その上で寝るようになった。
ほとんど落ちそうになりながら2人べったり寄り添って寝ていた。
早く卵を産まないかなと待ちわびていた。
ある朝、それはあまりにも唐突な出来事だった。
1号が冷たく固くなっていた。なんでこんなことが……原因不明だった。
1人ぼっちのうっちゃん小屋は何だか広々としていた。
毎朝元気な鳴き声を響かせていた2号は全く鳴かなくなってしまった。(続)
(その2)
2号は依然静かだった。1人だけの寂しい毎日だった。
飼っている動物を失うというのは悲しいものである。1号の突然の死に戸惑った。
しかし、こちらとしてもオスが1匹いてもしょうがない。卵を頂くためにはメスを探さねばならない。
ある日、「うこっけい、いるのね!」と声を弾ませて入ってくるお客さんがいた。このS氏こそが、奇跡の人だった。
S氏は自宅でうこっけいをたくさん飼っている「うこっけい大好き」さんなのである。
うこっけいの有精卵を産直市場で見つけては、自宅のうこっけい達に抱かせて何匹も孵(かえ)すことに成功しているらしい。
オスが1羽である理由を話すと、「メスを持ってきてあげる。ただし卵を孵して頂戴ね。簡単にはいかないと思うけど」という。
近頃、S氏の鶏小屋は親近交配ぎみで、新しいのが欲しいそうだ。
突然の話に半信半疑だったが、他にメスの当てもなく、しばらく待ってみることにした。
S氏の次の来店は、予想外に早かった。
「1羽のオスに対してメスは2羽くらいがいい」と2羽のメスを持ってきてくれたのだ。なんともありがたいことである。
早速うっちゃん小屋へ入れてみた。やはり警戒しているようだ。2号も落ち着かない。みんな仲良くできるといいのだけれど。
次の日の朝。
「なんで鶏小屋に血が流れるんだ~」
丸太の木の上に血痕があった。しかし3羽は皆元気な様子。
ではこの血痕はいったい…
あれれ?よく見ると、メスには鶏冠のようなビラビラが額にあるようだが、1羽のビラビラがない。
しばらく彼らの様子を見ていると、ビラビラのある方はとても気が強くて、ビラビラの無い方をくちばしで何度もつっついていじめている。
どうやら一晩のうちにメスの上下関係が決まったようだ。
決闘の末、ビラビラは引き千切られたのだ。血痕はその時のものだろう。鶏の女の世界は凄まじい。
さて、ビラビラのある方は1号。無い方は3号と名付けられた。
1号も3号もすぐに慣れてみんなで仲良くやっているようだ。
うっちゃん小屋は賑やかさを取り戻し、2号も元気に鳴いている。
朝は、1号が我先にごはんの入れ物に顔を突っ込み、3号は遠慮がちに脇から顔を突っ込んで、1号にいじめられながら食べる。
2号は2人の様子を眺めておろおろしながら、ゆっくり食べ始める。
夜は、一番高い丸太の木の上に2号が陣取り、その隣の席に1号が座る。
3号は2号と1号の間に入りたくて懸命に入り込もうとするが失敗し、なかなか居場所が決まらないようだった。
ある日の真夜中。
突然、うっちゃん達が声を上げて騒いだ。
何事かとモカも驚いて吠えた。懐中電灯を持って慌てて飛び出した。
外は真っ暗。もし熊だったら…恐る恐る近づいた。照らしてみると白い毛の塊が動いた。
「うっちゃんか?…違う。猫だ!!」
扉は鍵が掛ったままだった。いったいどこから中に入ったのか。
慌てて扉を開けたとたん、大きな白い猫は手に掛けていた1羽を放し、音もなくスッと逃げていった。
うっちゃん達は無事か。
2号はいつもの一番高い丸太の木の上で放心状態。
3号は小屋の左隅で縮こまっていた。
そして猫に襲われていたのは1号で、ピクリとも動かなかった。
「やられた」
まさか猫が入り込むなんて。網のほんのわずかな隙間から入り込んだのだ。
あたりは真っ暗で、午前0時すぎ。どうしようもなかった。
とにかく夜が明けるのを待つしかなかった。
目が覚めてすぐ、うっちゃん小屋へ駆け寄った。皆は昨夜と同じ位置にいた。
1号は動かない…
いや、「動いた!」
なんと1号は生きていた。しかし様子が変だ。目は虚ろで生気がなかった。
気の強い1号が別人のようになってしまった。(続)
(その3) 完結編
それはいわゆる「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」というものに違いなかった。
猫に襲われた強い衝撃でショック状態に陥り、あの強気な1号が、別人のように大人しくなってしまったのだった。
元気がなくて食事は喉を通らず、一日中ボーっとしている。(巷では「うっちゃんがうつ病になったらしいよ」という噂が広まっていた、と後から知る。)
気が優しい2号と3号はとても心配していた。
3号は「大丈夫?」とオロオロしながら1号のそばにぴったりついていた。
その後、月日とともに1号の容体はだんだん回復し、元通りの1号へと戻っていった。
3号はまた1号に突かれながらごはんを食べることになった。あんなに心配してあげたのに、ね。
平穏な日々が続いていた。
ある朝ついに「卵」を発見。
それはニワトリのより小さくて薄い茶色をしていた。触るとまだ温かかった。
1個5百円程で売られているというウコッケイの卵とは、いったいどんな味がするのだろう…。
まずは「たまごかけごはん」で戴こう。
ご飯は炊きたて。お醤油は特選丸大豆で。アツアツのうちに「いただきます!」
黄身はニワトリのより黄色っぽく白身はしっかりしている。
ふむ。卵臭さは全く無い。さらりとした感じで、たまごかけによく合う。あ~おいしい。
ウコッケイは3~4日に1個ぐらいしか卵を産まない(しばらく産まない時もあります)。
また非常に栄養価が高く、高たんぱくで低脂肪なんだって。
それから卵は1号によって温め始められた。
気付くと卵は増えて4つになっていた。
他の2羽も1号にくっついて一緒に温め始めた。なんと協力的である。
驚くべき事実も判明した。
卵を産んでるのは1号だけで、3号は全く産んでいないのだった!
卵は21日で雛にかえる。温め始めて2週間余たった頃、S氏がやってきた。
「確かめてみようか」
バケツに温かいお湯を用意し、その中に4つの卵を浮かべてみる。
お湯の中でクルクルと回転したら生きている証拠なんだと。
「…動いてないですよね?」
まだ21日経ってないということで様子を見ることにした。
3週間が過ぎてもうっちゃん小屋にヒヨコさんの姿はなかった。
4週間が過ぎ、卵の数が減った。親鳥はダメだと判断した卵は巣の外へ放り出すそうだ。賢い。
季節はもう冬らしくなっていた。1号は温めることを止め、卵も産まなくなった。
年末。モカモアコーヒーは年末年始休暇に入り、大掃除をしてホッと一息ついていた12月30日。
朝、うっちゃん小屋を覗くと2号が全く動かなかった。
固くなっていた。眠っているのかと思った。
「なんで?」昨日まであんなに元気だったじゃない。
最近、日だまりでウトウトしていることが多かったけど、あれは何かの兆しだったのか…。
かつての1号も2号もなぜ突然死んでしまうのか…。
持ち上げて、うっちゃんのあまりの軽さに驚く。
かつての1号の隣に埋めて、お線香をあげた。S氏との約束が果たせなくなってしまった。
冬の寒さにも負けず、うっちゃん1号3号は元気だ。
2号がいなくなって変ったことと言えば、1号が少し優しくなった。
嫌そうな顔をしながらも3号をいじめない。2人で寄り添って寝ているようだ。
2号がいなくても1号はまた卵を産むようになった。
3号は相変わらず卵を産まないが、性格がいいから許されている、のだ。
通りすがりの山行きの人たちが、うっちゃん小屋を覗いて「うっちゃんって、ウサギだわ!」とか言っている。
今日もうっちゃん1号3号は、モカモアコーヒーの入口にいて「守衛さん」の任務を果たしている。(終)
追記: 現在、うっちゃんはいません。獣に拉致された模様。あるいは「北」の仕業か…。(サムゲタンという料理に烏骨鶏を使うらしい)